第41章 不動産開発会社の案件別NAV
読了の目安 約2分第23章・第24章で扱った、賃貸用不動産を保有・運営する会社(REIT、不動産賃貸会社)とは対照的に、この章では、不動産を「開発し、販売する」ことを主な事業とする、不動産開発会社(デベロッパー)の評価を扱う。
不動産開発会社の収益構造:「在庫」としての開発案件
不動産開発会社の事業モデルは、土地を取得し、そこにマンションや商業施設、オフィスビルなどを開発・建設し、それを第三者に販売する(あるいは、一部は自社で保有して賃貸に回す)、という一連のプロセスから成り立っている。この「開発してから販売するまでの、進行中の開発案件」は、会計上、しばしば「棚卸資産(在庫)」として扱われる。これは、第04章で学んだ、通常の製造業における「在庫」の概念を、不動産という、極めて長期の開発サイクルを持つ資産に当てはめたものだと理解できる。
案件別NAVという、実務上の評価アプローチ
不動産開発会社の評価において、実務上、極めて広く用いられているのが、「案件別NAV」というアプローチだ。これは、第23章で学んだREITのNAVアプローチの発想を、賃貸資産ではなく、「開発中・開発予定の、個々のプロジェクト」に適用したものである。
具体的には、その開発会社が保有する土地・開発案件を、一つひとつ個別に洗い出し、それぞれの案件について、「完成後の販売価格の見積もり」から、「今後投じる開発コスト(建設費、金融費用など)」を差し引いて、その案件から得られる利益を算出する。そして、この利益が実現するタイミング(完成・販売の時期)までの期間を考慮し、適切な割引率で現在価値に割り引く。これをすべての案件について合計し、さらに会社全体の純有利子負債(第03章)を差し引くことで、案件別NAVによる株主価値が算出される。
案件別NAV = Σ(各開発案件について、[販売価格見積もり − 今後の開発コスト]を現在価値に割り引いた金額) − 純有利子負債
この手法は、第25章の資源NAVや、第26章のバイオrNPV(成功確率の調整という点でも類似性がある。開発案件には、許認可のリスクや、販売が計画通りに進まないリスクなど、独自の不確実性が伴うため、これらのリスクを踏まえた、確度の調整が必要になることがある)と、構造的に極めて近い、「有限のプロジェクトの集合体として、会社全体を評価する」という発想を共有している。
用地仕入れという、将来の成長の種
不動産開発会社の将来の成長性を評価する上で、もう一つ重要な論点が、「用地仕入れの状況」だ。現在、開発・販売が進行中の案件だけでなく、今後、新たに開発に着手する予定の、取得済みの土地(仕掛かり前の用地在庫)の量と質が、その会社の将来数年間にわたる、成長の「種」となる。用地の仕入れが滞っている会社は、現在の開発案件が一巡した後、成長の勢いを失うリスクがあり、この観点からのチェックも、不動産開発会社のドライバー予測(第08章)において、重要な要素となる。