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初心者向け・理論株価の教科書

たとえ話と具体例で、現在の理論株価・10年後の価値・業種別モデルの考え方を学ぶ。

最終章
10Y STOCK VALUE / TEXTBOOK別冊
最終章

最終章

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理論株価モデルの教科書

最終章 ─ 読み終えた者たちへ

長かった。本当に、長い旅だった。

もし君が、第01章の「理論価値は未来予知ではない」という、あの少し挑発的な書き出しから、ここまで一つも飛ばさずに読み進めてきたのだとしたら、まず何よりも先に、その持続力に、素直に敬意を表したい。CAGRと複利の掛け算に頭を抱え、EVと株主価値の違いを叩き込まれ、銀行と保険と資源とバイオとSaaSという、まるで別の惑星の住人のような業種を、次々と渡り歩き、最後はモンテカルロ・シミュレーションという、名前だけ聞くとカジノの隣にありそうな手法にまで辿り着いた。よくぞ、ここまで来た。

この教科書が、本当は何を教えたかったのか

種明かしをしよう。この教科書は、表向きには「理論株価の計算方法」を教える本として書かれている。目次には、DCFだの、WACCだの、NAVだの、rNPVだのと、いかにも技術的な単語が、47個も並んでいる。だが、正直に告白すると、この教科書が本当に君に手渡したかったものは、そうした個別の計算テクニックそのものではない。

計算式は、正直に言えば、忘れてしまってもいい。WACCの数式を、いつでも空で書けなくたって構わない。ゴードン成長モデルの分母がどうだったか、来月には思い出せなくなっているかもしれない。それでいい。数式は、必要になったときに、この教科書を、あるいは他のどんな教科書を、もう一度開けば済む話だ。

この教科書が、本当に君の中に残したかったものは、たった一つの「姿勢」だ。それは、「なぜそうなるのかを、誰かの受け売りではなく、自分の頭で説明できるまで、考えることをやめない」という姿勢である。第01章で、理論株価とは「条件付きの計算結果」だと書いた。この一文の裏には、「だからこそ、その条件——前提、仮定、見立て——を、常に自分自身の言葉で語れる状態を保っておけ」という、静かだが、譲れないメッセージが込められていた。47章分の技術は、すべて、この一つの姿勢を、様々な角度から、繰り返し、繰り返し、鍛え直すための、いわば筋トレのメニューだったのだ。

「分からなかった章」があって、当然だ

正直に言おう。この47章の中には、一読しただけでは、腑に落ちなかった章が、きっといくつかあったはずだ。もしかしたら、WACCの数式を目にした瞬間、目が滑ったかもしれない。あるいは、保険会社のエンベディッド・バリューのあたりで、「これは自分には関係ない世界の話だ」と、少し距離を感じたかもしれない。それでいい。むしろ、それが自然な反応だ。

この教科書は、一度読んで、すべてを完璧に理解し、暗記するための本ではない。むしろ、これから先、実際に君が、ある会社の株を買おうか迷ったとき、あるニュースで「業績予想を上方修正」という文字を見たとき、あるいは友人が「あの会社、割安だと思う」と言うのを聞いたとき——そのたびに、この教科書のどこかの章のページを、もう一度開き直す。そういう、長い付き合いを前提にした本なのだ。第01章から第47章まで、すべての知識は、この教科書の中に、いつでも君を待つ形で、静かに眠っている。分からなかった部分は、「今は分からなかった」というしおりを挟んで、次に進めばいい。理解は、一度にやってくるものではなく、何度も同じ場所に立ち戻るたびに、少しずつ深まっていくものだ。

「10年後」という時間の重さについて、最後にもう一度

この教科書は、「10年後の株価予測」というテーマを掲げて始まった。ここで、最後に、この「10年」という時間の重さについて、もう一度、正直に語っておきたい。

10年という歳月は、途方もなく長い。10年前、君はどんな生活をしていただろうか。10年前に存在すらしなかった技術、10年前には誰も名前を知らなかった企業が、今、世界を動かしている。逆に、10年前には栄華を誇っていたはずの企業が、今はもう見る影もない、ということも、決して珍しくない。

この教科書で学んだDCFや、ドライバー予測や、ターミナルバリューといった技術は、この「10年という、途方もない不確実性」に対して、決して魔法のような解決策を与えてくれるわけではない。これらの技術が与えてくれるのは、「不確実性を、なかったことにする力」ではなく、「不確実性を、正面から見据えながら、それでも前に進むための、思考の足場」である。この違いを、決して忘れないでほしい。理論株価という数字は、10年後の未来を、確定させるものではない。それは、「今この瞬間、自分が持っている情報と論理をもとに、精一杯、誠実に見積もった、一つの仮の地図」に過ぎない。地図は、旅の途中で、何度も描き直されるべきものだ。10年という長い航海の途中で、風向きが変われば、帆の張り方も変えなければならない。理論株価も、同じだ。一度計算して、それで終わりではない。会社の状況が変わり、業界の環境が変わり、世界経済が変われば、その都度、この教科書で学んだ道具を使って、計算をやり直せばいい。

数字の向こうにいる、生身の人間たちを忘れないために

最後に、少しだけ、技術論から離れた話をしたい。この教科書では、47章にわたって、実に多くの数式と、専門用語と、業種別のフレームワークを扱ってきた。しかし、これらの数字の一つひとつの向こう側には、必ず、生身の人間たちの営みがある。

工場で汗を流す従業員、研究室で新薬の可能性を信じて実験を繰り返す研究者、資金繰りに頭を悩ませる中小企業の経営者、そして、その会社が生み出す製品やサービスを、日々の生活の中で使っている、無数の消費者たち。理論株価という数字は、こうした無数の人間の営みの、ほんの一部を、極めて単純化された記号に変換したものに過ぎない、という謙虚さを、いつまでも持ち続けてほしい。

数字だけを追いかけ、その数字が何を表しているのかという想像力を失ってしまうと、理論株価評価という営みは、単なる無味乾燥な数字遊びに堕してしまう。逆に、この教科書で学んだ計算の技術と、「この数字の向こうに、どんな事業と、どんな人間の努力があるのか」という想像力を、両輪として持ち続けられたなら、君の理論株価評価は、単なる計算問題を超えた、血の通った、真に実践的な知恵になるはずだ。

さようならではなく、いってらっしゃい

この教科書は、ここで一区切りを迎える。しかし、これは「さようなら」ではない。むしろ、「いってらっしゃい」という言葉の方が、ふさわしい。

これから君は、この教科書を閉じて、実際の決算短信を開き、実際の株価チャートを見つめ、実際の投資判断という、この教科書の中では決して味わえない、生々しい現実に向き合っていくことになる。そこでは、この教科書で学んだ通りにいかないことも、きっと山ほどあるだろう。前提が外れることもあるだろう。想定していなかった出来事が起きることもあるだろう。それでいい。それこそが、理論と現実の、健全な緊張関係というものだ。

そのたびに、この47章のどこかに、きっと、君が今直面している問題への、何らかのヒントが眠っているはずだ。困ったときは、遠慮なく、この教科書のページを、もう一度開いてほしい。第01章の、あの最初の一文を、もう一度読み返してほしい。「理論価値は未来予知ではない」。この一文の重みを、実際の投資という経験を積んだ後に読み返すと、きっと、初めて読んだときとは、また違った深みをもって、君の心に響くはずだ。

47章、本当にお疲れ様でした。ここから先は、教科書の中の話ではなく、君自身の物語だ。

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全47章 + 最終章・用語リスト

01
I · 価値評価の土台

理論価値は未来予知ではない

02
I · 価値評価の土台

CAGR、複利、現在価値

03
I · 価値評価の土台

貸借対照表と純有利子負債

04
I · 価値評価の土台

利益、営業CF、FCFを分ける

05
I · 価値評価の土台

1株価値と希薄化

06
I · 価値評価の土台

EVと株主価値を混ぜない

07
I · 価値評価の土台

株主資本コストとWACC

08
I · 価値評価の土台

正常化とドライバー予測

09
I · 価値評価の土台

観測事実・推定・仮定を分ける

10
II · 基本モデル

PERの理論と正しい使い方

11
II · 基本モデル

上場黒字企業の簡易評価

12
II · 基本モデル

Gordon成長モデルとDDM

13
II · 基本モデル

10年FCFF DCFを組み立てる

14
II · 基本モデル

FCFE DCF

15
II · 基本モデル

ターミナル価値とROIC

16
II · 基本モデル

残余利益とP/B

17
III · 企業と業種

上場赤字企業の黒字化モデル

18
III · 企業と業種

非上場企業の株主価値

19
III · 企業と業種

SOTPと持株会社NAV

20
III · 企業と業種

会社に式を合わせる

21
III · 企業と業種

銀行をP/TBVと残余利益で評価する

22
III · 企業と業種

保険会社の価値評価

23
III · 企業と業種

REIT・不動産NAV

24
III · 企業と業種

不動産賃貸会社の価値評価

25
III · 資源・バイオ・公益など

資源NAV

26
III · 資源・バイオ・公益など

バイオrNPV

27
III · 資源・バイオ・公益など

電力・ガス会社の価値評価

28
III · 資源・バイオ・公益など

規制公益会社の価値評価

29
III · 資源・バイオ・公益など

総合商社のSOTP評価

30
III · 資源・バイオ・公益など

持株会社のNAV評価

31
III · 資源・バイオ・公益など

コングロマリットの部門別評価

32
III · 資源・バイオ・公益など

証券会社の価値評価

33
III · 運用・航空・海運など

資産運用会社の価値評価

34
III · 運用・航空・海運など

航空会社の価値評価

35
III · 運用・航空・海運など

海運会社の価値評価

36
III · 運用・航空・海運など

鉄鋼会社の価値評価

37
III · 運用・航空・海運など

半導体メモリ会社の価値評価

38
III · 運用・航空・海運など

通信会社の価値評価

39
III · インフラ・建設・SaaSなど

インフラ運営会社の価値評価

40
III · インフラ・建設・SaaSなど

建設・エンジニアリング会社の価値評価

41
III · インフラ・建設・SaaSなど

不動産開発会社の案件別NAV

42
III · インフラ・建設・SaaSなど

SaaS・サブスクリプションの価値評価

43
III · インフラ・建設・SaaSなど

22業種モデル横断演習

44
IV · 実践と検証

指数・ETF・アクティブ運用

45
IV · 実践と検証

逆算と配当込みTSR

46
IV · 実践と検証

感度分析とモンテカルロ

47
IV · 実践と検証

モデル監査と投資メモ

終
最終章

最終章

語
用語リスト

用語リスト

提供原稿を収録した別冊です。計算条件はAIリファレンス、詳しい理論は既存のモデル教科書で確認できます。